執筆:ハゲとEDの診察室 編集部(現役医師) / 最終更新:2026年6月
この記事のポイント 「ハゲ(脱毛症)」の原因はAGAだけではない。円形脱毛症・薬剤性・抜毛症・感染症など多様で、原因の見極めが大切。AGA(男性型脱毛症)には遺伝と男性ホルモン(DHT)が関与。特に母方の祖父が薄毛だと素因を持つ可能性が高いとされる。喫煙・メタボリックシンドローム・頭皮環境などの生活習慣も、AGAの悪化に関わる可能性が報告されている。自己判断で放置せず、早めに医療機関へ。原因により相談先(皮膚科・精神科・処方医など)が異なる。
清潔感や外見が重視される場面は多く、なかでも頭髪は印象を左右する大きな要素です。「ハゲたくない」というのは多くの人の願いでしょう。ただ、ひとくちに「ハゲ」といっても、その原因はいくつもの種類があります。この記事では、ハゲる原因とその対策を医学的に解説します。
AGAの全体像から知りたい方は →AGAとは?原因・症状・治療を解説
ハゲは病気なの?ハゲの定義と原因

ハゲの定義はなんですか?どれくらいの人がハゲるんですか?
毛が抜けることを医学的には脱毛症と呼びます。多くの方がイメージする「ハゲ」は、加齢とともに頭髪の生えている面積が狭くなる男性型脱毛症(AGA:Androgenetic Alopecia)を指すことがほとんどです。女性は禿げ上がることは多くありませんが、加齢とともに髪の密度が低くなる点は同様です。AGAは日本人男性では20歳代後半〜30歳代にかけて目立ちはじめて徐々に進行し、40歳代以降に完成するとされ、全年齢平均で約30%、50代以降では40数%が該当すると報告されています[1][2]。これだけ多くの方が悩む一方で、脱毛症にはAGA以外のタイプもあることはあまり知られていません。「ハゲ=AGA」と決めつけず、ほかの原因も知って見分けることがとても重要です。
ハゲる原因にはどんなものがあるんですか?
AGA以外の脱毛症には、たとえば次のようなものがあります。
- 円形脱毛症:毛包に対する自己免疫が関与すると考えられ、遺伝的素因を背景に、疲労・ウイルス感染・ワクチン接種・出産・精神的/身体的ストレスが引き金になるとされます。
日本での有病率は2012年で0.16%、2019年で0.27%と増加傾向です。[14]橋本病などの甲状腺疾患、全身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチといった自己免疫疾患を合併すること、[3][4][5]アトピー性皮膚炎・メタボリックシンドローム・精神疾患・鉄欠乏性貧血を合併する割合が高く、 特に精神疾患は約半数(49.4%)にみられたとの報告があります。[6]
- 薬剤性:抗腫瘍剤(いわゆる抗がん剤)が有名ですが、脂質異常症治療薬・抗血栓薬・抗うつ薬・経口避妊薬などのホルモン剤・痛風治療薬など、多種多様な薬剤で報告があります。
治療開始直後〜4か月以内に急激な脱毛が出た場合は関連があるかもしれません。ただし、自己判断で薬を中止せず、処方を受けている医師に相談することが重要です。[7]
- 抜毛症:ストレスや不安を背景に自分で毛を引き抜いてしまう精神疾患で、思春期の女性に多いとされます。
AGAなどとは異なり、自分で毛を引き抜くため、切れ毛(断裂毛)がみられることがあります。 思春期に好発しますが、成人後も続いたり、程度が変動しながら生涯繰り返すこともあります。[8]
- 感染症(ケルズス禿瘡):白癬(いわゆる水虫)の頭部への感染が関与します。
現在は衛生環境が改善しましたが、ペットなどを介して白癬に感染し、ステロイド外用薬を誤って使うことで悪化・発症するとされます。小児や若年者に多く、早期発見できれば完治が期待できますが、長期間放置すると瘢痕(はんこん)が残る可能性があります[9]。
これらに当てはまりそうと感じたら、皮膚科・精神科・処方医など、それぞれの相談先に相談するのが望ましいです。
ハゲやすい人の特徴

ハゲって遺伝するんですか?
AGAには遺伝と男性ホルモンが関与するとされます。具体的には、X染色体上の男性ホルモン受容体(アンドロゲン受容体)遺伝子の多型や、常染色体の17q21・20p11に疾患関連遺伝子があるとされます[10]。男性は母親からX染色体を受け継ぐため、母方の祖父がAGAの場合、発症する素因を持っている可能性が高いとされます。
AGAってどうしてハゲるんですか?

髪は、成長期・退行期・休止期という毛周期(ヘアサイクル)を繰り返して生え替わっています。男性ホルモンは筋肉や骨の発達を促し、ヒゲや胸毛を濃くする一方で、頭部の感受性の高い毛包では軟毛化を引き起こします。男性ホルモンの一つであるテストステロンは、II型5α還元酵素という酵素によってジヒドロテストステロン(DHT)に変換されます。DHTは男性ホルモンの中でも特に強く頭頂部・前頭部で作用し、成長期を短縮させ休止期の割合を増やします。その結果、太く長い毛を維持できず、細く短い軟毛ばかりになっていきます[10]。
ハゲやすい生活習慣ってどんなものがありますか?
筋トレするとハゲになるんですか?
現時点で、筋トレによってハゲるという明確なデータはありません。運動にはメタボリックシンドロームの改善など、全身の健康に良い影響が期待できますが、AGAを予防できるとする十分な根拠はありません。
原因をさらに詳しく →AGAの原因/ 治療を知りたい →AGAの薬の種類は?効果・副作用・選び方
まとめ|ハゲの原因は多様。自己判断で放置しない

今回は、ハゲ(脱毛症)の原因がAGAだけでなく、自己免疫疾患・薬剤・感染症・生活習慣など多様であることを紹介しました。AGAには遺伝と男性ホルモン(DHT)、そして生活習慣が関与します。
生活習慣の改善や適切な治療によって、脱毛症は進行を抑えたり改善したりできる可能性があります。自己判断で放置せず、気になる症状があれば早めに医療機関へ相談し、あなたの髪を守りましょう。
出典一覧
- Takashima I, Iju M, Sudo M. Alopecia androgenetica: its incidence in Japanese and associated conditions. In: Orfanos CE, et al, eds. Hair Research. Berlin: Springer Verlag; 1981: 287-293.(書籍・URLなし)
- 板見智. 日本人成人男性における毛髪(男性型脱毛)に関する意識調査. 日本医事新報. 2004; 4209: 27-29.(和文誌・URLなし)
- Betz RC, et al. Genome-wide meta-analysis in alopecia areata resolves HLA associations and reveals two new susceptibility loci. Nat Commun. 2015;6:5966. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25608926/
- Petukhova L, et al. Genome-wide association study in alopecia areata implicates both innate and adaptive immunity. Nature. 2010;466(7302):113-117. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20596022/
- Huang KP, et al. Autoimmune, atopic, and mental health comorbid conditions associated with alopecia areata in the United States. JAMA Dermatol. 2013;149(7):789-794. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23700152/
- Lee S, et al. Comorbidities in alopecia areata: A systematic review and meta-analysis. J Am Acad Dermatol. 2019;80(2):466-477.e16. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30031145/
- 天羽康之. 毛包幹細胞から考える薬剤性脱毛症の病態. 北里医学. 2014;44:1-5.(和文誌・URLなし)
- American Psychiatric Association. 精神障害の診断・統計マニュアル第5版(DSM-5).(書籍・URLなし)
- 日本皮膚科学会. 日本皮膚科学会皮膚真菌症診療ガイドライン2019. https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/shinkin_GL2019.pdf
- 日本皮膚科学会. 男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版. https://www.dermatol.or.jp/dermatol/wp-content/uploads/xoops/files/AGA_GL2017.pdf
- Su LH, Chen TH. Association of androgenetic alopecia with smoking and its prevalence among Asian men: a community-based survey. Arch Dermatol. 2007;143(11):1401-1406. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18025364/
- Erden O, et al. Increased prevalence of insulin resistance and metabolic syndrome in men with early-onset androgenetic alopecia: a case-control study. J Cosmet Dermatol. 2025;24(12). https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41312577/
- Trüeb RM, et al. Scalp condition impacts hair growth and retention via oxidative stress. Int J Trichology. 2018;10(6):262-270. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30783333/
- Campos-Alberto E, et al. Prevalence, comorbidities, and treatment patterns of Japanese patients with alopecia areata: A descriptive study using Japan medical data center claims database. J Dermatol. 2023;50(1):37-45. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36321512/
