この記事のポイント ED(勃起不全)とは「満足な性行為に十分な勃起が得られない・維持できない状態」。よくある状態で、一人で悩む必要はありません。原因は体(血管・生活習慣病など)・心(ストレス・不安)・薬などさまざまで、これらが重なる「混合型」が多いとされます。治療の中心はPDE5阻害薬(飲み薬)と生活習慣の見直し。効果や向き不向きは個人差があり、医師の診察で決めます。相談先は泌尿器科やED専門クリニック、オンライン診療など。本記事は公的情報・診療ガイドラインをもとに専門医監修で作成しています。
はじめに|「最近、自信が持てない」その悩み、あなただけではありません
「最近、途中で中折れするようになった」「朝立ちが減った」「硬さが昔ほどではない」——こうした変化を、年齢のせいだと一人で抱え込んでいませんか。誰にも相談できず、こっそり検索している方も少なくありません。
EDは加齢とともに増える、めずらしくない状態です。ある全国調査では、日本人男性のEDの割合は約3割と報告されています[9]。結論からお伝えすると、EDの多くは適切な対処で改善が期待できる状態で、一生治らないものではありません。大切なのは、正しく知って必要なときに相談できることです。この記事では、EDの意味・症状・原因・タイプ・セルフチェック・治療法・受診先までを、診療ガイドラインや公的情報をもとに専門医監修で整理します。
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EDとは?意味と定義(ED=勃起不全)
EDとは「Erectile Dysfunction(エレクタイル・ディスファンクション)」の略で、日本語では「勃起不全」または「勃起障害」と呼ばれます。診療ガイドラインでは、満足な性行為を行うのに十分な勃起が得られない、または維持できない状態が持続または再発することと説明されています[1]。まったく勃起しない場合だけでなく、硬さが足りない、途中でやわらかくなる(中折れ)といった状態も含まれます。
一時的に調子が出ないことは誰にでもあります。こうした状態が継続的・反復的に続く場合に、EDとして相談・治療の対象になります[2]。2023年の全国調査では日本人男性の約30.9%にEDがみられたと報告されており、加齢とともに割合は高くなります[9]。仕組みを知ると、治療薬がどう働くのかも理解しやすくなります。

勃起は、性的な刺激をきっかけに、血管をゆるめる物質である一酸化窒素(NO)が放出されることから始まります。これによりcGMPという物質が増え、陰茎海綿体の平滑筋がゆるんで血管が広がり、血液が流れ込むことで勃起が起こります[2]。このcGMPを分解するのがPDE5という酵素で、後ほど紹介するED治療薬(PDE5阻害薬)は、この分解をおさえることで勃起を助けます。一連の流れのどこかがうまくいかないと、EDが起こります。
EDの症状・初期サイン(中折れ・朝立ちの減少など)
EDのサインは人によってさまざまですが、次のような変化に気づくことが多いとされます。気になる項目がないか、確認してみましょう。

これらは「年齢のせい」と見過ごされがちですが、継続して続く場合は体や心からのサインのこともあります[2]。思い当たる点があっても、自分を責める必要はありません。次の章のセルフチェックや、医療機関での相談が次の一歩になります。
EDのセルフチェック(重症度の目安)
EDの程度をはかる目安として、世界的に使われる2つの指標があります。1つは5つの質問に答えるIIEF-5(SHIM)、もう1つは勃起の硬さを4段階で表すEHS(勃起硬度スコア)です。

IIEF-5は、最近6か月の状態を5つの質問で振り返るチェック票です。点数の目安は、22〜25点でEDの可能性は低い、17〜21点で軽度、12〜16点で軽度〜中等度、8〜11点で中等度、5〜7点で重度とされます。EHSは勃起の硬さを、グレード1(大きくなるが硬くならない)からグレード4(完全に硬い)の4段階で表します。
これらはあくまでセルフチェックの目安であり、確定診断ではありません。点数が低い・硬さのグレードが低いからといって過度に心配する必要はなく、逆に点数が高くても気になる症状があれば相談する価値があります。実際の診断や治療方針は、医療機関で医師が判断します。
EDの3つのタイプ(器質性・心因性・混合型)
EDは原因によって、大きく3つのタイプに分けられます[2]。どれか一つだけでなく、複数が重なって起こることも多いとされます。

器質性ED(体の問題が原因)
血管・神経・ホルモンの働きの低下によるものです。生活習慣病や加齢などが関わります。薬の影響による薬剤性EDも、器質性に含まれます。
一部の降圧薬や抗うつ薬などの影響で起こることがあります。服用中の薬がある場合は、受診時に医師へ伝えましょう。
心因性ED(心の問題が原因)
ストレス・緊張・不安・プレッシャーなどによるもので、比較的若い世代に多いとされます。「特定の相手や状況でだけ勃起しない」といったケース(いわゆる「妻だけED」と呼ばれることもあります)も、この心因性の一つとされます。これは医学用語ではなく、状況によって起こる心因性EDの一例です。ただし、状況によるように見えても体の要因が隠れていることもあるため、自己判断せず受診して確認すると安心です。
混合型ED(体と心の両方)
器質性と心因性が重なって起こるもので、実際にはこのタイプが多いとされています。
EDの原因とリスク因子(生活習慣・心の要因・血管のサイン)
EDの背景には、さまざまな原因・リスク因子があります[2]。代表的なものを整理します。

特に、糖尿病・高血圧・脂質異常症・肥満・喫煙などの生活習慣に関わる要因は、血管の働きを通じてEDと関わるとされています[2]。たとえば50歳以上では、糖尿病のある男性のほうがEDの割合が高いと報告されています[2]。
「ED=必ず心臓病になる」という意味ではありませんが、知っておきたいのは、EDが血管の状態を映すサインになりうるという点です。EDは、心臓や血管の病気に数年(おおむね2〜5年)先行してあらわれる場合があると国際的なコンセンサスで指摘されています[10]。むしろEDに早く気づけたことは、生活習慣を見直したり、健康状態を確認したりする良いきっかけにできる、と前向きにとらえることができます。
原因を年代別にもっと詳しく →EDの原因とは?年代別・生活習慣・薬・心の要因
EDの治療法(PDE5阻害薬・生活習慣の見直しなど)
EDは治る?改善は期待できる?
「EDは治るのか」は、多くの方が一番気にされる点です。原因やタイプによりますが、適切な治療や生活習慣の見直しによって改善が期待できるとされています。一生治らないものと思い込まず、まずは正しく知り、医師に相談して自分に合った方法を見つけることが大切です。
EDの治療の中心は、PDE5阻害薬と呼ばれる飲み薬です[2]。代表的なものに、シルデナフィル(バイアグラ)、タダラフィル(シアリス)、バルデナフィル(先発のレビトラは2022年に販売終了し、現在は同じ成分のジェネリックが流通)があり、いずれも国内で承認された効能・効果は「勃起不全」です[3][4][5]。これらは性的な刺激があって初めて働く薬で、飲めば自動的に勃起するわけではありません。

3種類は作用時間や食事の影響などに違いがあり、どれが合うかは生活スタイルや体質、副作用の出方によって変わります。効果や向き不向きには個人差があるため、医師の診察を受けて選ぶことが基本です。
薬以外では、運動・減量・禁煙・生活習慣病の管理といった生活習慣の見直しも、EDの改善や予防に役立つとされています[2]。このほか、陰圧式の器具や注射、手術といった選択肢もありますが、まずは医師に相談して自分に合った方法を見つけることが大切です。
薬を詳しく知りたい方は →ED治療薬の種類・効果・選び方(準備中)
ED治療薬の注意点(飲み合わせ・副作用・個人輸入)
ED治療薬は医師の指導のもとで使えば心強い選択肢ですが、安全に使うために必ず知っておきたい注意点があります。

飲み合わせ(併用してはいけない薬)
PDE5阻害薬は、狭心症などで使う硝酸薬・NO供与剤(ニトログリセリン、ニコランジルなど)やリオシグアトと一緒に使うことができません(併用禁忌)。血圧が下がりすぎる危険があるためです[3]。バルデナフィルでは、これに加えて先天性QT延長や一部の抗不整脈薬を使っている場合も使用できません[5]。持病で薬を飲んでいる方は、自己判断で併用せず、必ず医師に伝えてください。
主な副作用
ほてり・頭痛などが報告されています[3][4]。また、まれに視力や聴力の異常が報告されており、こうした症状が出た場合は服用を中止して受診してください。気になる症状は自己判断で続けず、医師に相談しましょう。
ネット通販・個人輸入は特に注意
インターネットの個人輸入で安く入手できるように見える薬には、大きなリスクがあります。2016年の製薬会社合同調査では、ネットで入手したED治療薬の約4割が偽造品だったと報告されています[7]。さらに、個人輸入した薬で健康被害が起きても、公的な救済制度(医薬品副作用被害救済制度)の対象外となる場合があります[8]。安全のため、医師の処方を受けて入手することをおすすめします。
EDは何科を受診する?(泌尿器科・専門クリニック・オンライン)
EDの相談は、泌尿器科が基本です。このほか、ED治療を専門に扱うクリニックや、スマホで相談できるオンライン診療も選択肢になります。「何科に行けばいいか分からない」という理由で受診をためらう方は多いですが、まずは泌尿器科を目安に考えるとよいでしょう。

「診察で男性器を見せなければいけないのでは」と不安に感じる方もいますが、ED治療は問診(症状や持病、飲んでいる薬の確認)が中心で、必ずしも視診や特別な検査が必要とは限りません。恥ずかしさから受診をためらう方は多いですが、実際に受診した方からは「思ったより恥ずかしくなかった」という声も聞かれます。一人で抱え込むより、まず相談してみることが解決への近道です。
人目が気になる方は →EDのオンライン診療とは?仕組みと選び方(準備中)
EDの治療費と保険(自費が基本・不妊治療の保険適用)
通常のED治療は健康保険が使えない自由診療(自費)で、費用は全額自己負担になります。費用は薬の種類・錠数やクリニックによって変わりますが、薬代は1錠あたり数百円〜1,500円程度が一つの目安とされることが多く、ジェネリック(後発品)は先発品より安い傾向があります。これに診察料などが加わる場合があり、正確な金額は医療機関によって異なります。

なお、2022年4月から、「不妊治療を目的とする場合」に限って、先発のバイアグラ・シアリスが条件付きで保険適用となりました[6]。ただし、泌尿器科で一定の経験を持つ医師の処方であることなど複数の要件があり、ジェネリックは対象外、通常のED治療は引き続き自費です。誤解しやすい点なので、保険の利用可否は医療機関で確認してください。
料金や続けやすさを比べたい方へ →ED・AGAオンライン診療の選び方・比較
よくある質問(FAQ)
EDについて、よく寄せられる質問にお答えします。
Q. EDは治るの?
A. 原因やタイプによりますが、適切な治療や生活習慣の見直しで改善が期待できるとされています。まずは医師に相談し、自分に合った方法を見つけることが大切です[1]。
Q. ED治療薬は癖になる・一生飲み続けるの?
A. PDE5阻害薬は性的刺激があるときに一時的に働く薬で、依存を生じさせるものではないとされています。継続の要否は原因や状態によって異なり、医師と相談して決めます[2]。
Q. 若い(20代・30代)のにEDになるのはなぜ?
A. 若い世代では、ストレスや不安・緊張などによる心因性のことが多いとされます。一人で抱え込まず相談することが、改善の第一歩になります[2]。
Q. 特定の相手とだけ勃たない「妻だけED」はなぜ?
A. 心因性EDの一つとされ、関係性やプレッシャーなどが関わることがあります。医学用語ではなく状況による状態を指す呼び方です。気になる場合は医療機関で相談を[2]。
Q. 個人輸入の薬は安くて大丈夫?
A. ネット入手品は偽造品の割合が高く、健康被害が出ても公的救済の対象外になる場合があります。医師の処方を受けて入手することをおすすめします[7][8]。
まとめ|一人で悩まず、正しい知識から一歩を
最後に、この記事の要点を振り返ります。

- EDは「満足な性行為に十分な勃起が得られない・保てない状態」。よくある状態で、めずらしいことではありません。
- 原因は体・心・薬などさまざまで、混合型が多い。生活習慣病や血管の状態と関わることもあります。
- 治療の中心はPDE5阻害薬と生活習慣の見直し。効果や向き不向きは個人差があり、医師の診察で決めます。
- 飲み合わせ(硝酸薬など)の禁忌に注意し、個人輸入は避ける。相談先は泌尿器科やオンライン診療など。
EDは、正しく知れば対処できる状態です。恥ずかしさから一人で抱え込まず、気になることがあれば医療機関に相談する一歩を踏み出してみましょう。
ED治療薬の選び方/EDのオンライン診療/AGAとは(薄毛)/ED・AGAオンライン診療の選び方・比較
出典一覧
- 日本性機能学会/日本泌尿器科学会 編『男性性機能障害診療ガイドライン2025年版』リッチヒルメディカル, 2025.(ED診療ガイドライン第3版2018の改訂最新版)https://www.jssm.info/
- StatPearls (NCBI Bookshelf) “Erectile Dysfunction”. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK562253/
- バイアグラ錠(シルデナフィルクエン酸塩)添付文書(KEGG医療用医薬品情報). https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00066489
- シアリス錠(タダラフィル)添付文書(KEGG医療用医薬品情報). https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00053585
- バルデナフィル錠(旧レビトラ)添付文書(KEGG医療用医薬品情報). https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00068797
- 厚生労働省 不妊治療に関する保険適用の通知(令和4年3月25日 保医発0325第7号). https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc6607&dataType=1&pageNo=1
- ファイザー・バイエル薬品・日本新薬・日本イーライリリー4社合同調査(2016). 報道:日本経済新聞 https://www.nikkei.com/article/DGXLASDG24H9T_U6A121C1CR8000/
- PMDA 医薬品副作用被害救済制度 ※個人輸入した医薬品は対象外となる場合があります. https://www.pmda.go.jp/relief-services/adr-sufferers/0001.html
- 日本人男性のED有病率に関する全国調査(2023年・1998年調査との比較). World J Mens Health, 2025. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11704172/
- Princeton Consensus(EDと心血管疾患リスクに関する国際コンセンサス). https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3498391/
